奇才ダリの美しくも生々しい神話世界へ…「ヒストリア〜神話と物語の世界〜」開催。
展覧会「ヒストリア〜神話と物語の世界〜」
神話、聖書、詩篇、説話…これらは古来より私たちの生活や文化に寄り添い、信仰や教訓として時代の流れとともに継承されてきました。文学や音楽、絵画においてもまた然り。多くの芸術家は神話や物語から着想を受け、神秘と幻想の世界を作品の中に表現してきました。
20世紀を代表するスペイン出身の芸術家サルバドール・ダリ(1904-1989)もその一人です。ダリが描く神話をテーマとした作品には、伝統的な歴史画とは異なる趣向が多々見られ、美しくも生々しい世界が広がっています。
「ヒストリア〜神話と物語の世界〜」では、ダリの作品を中心に、神話や物語などのテーマを扱った諸橋近代美術館のコレクションをご紹介しながら、作品に描かれた物語の原典がどのようにして語り継がれ、そして、芸術家館に着想を与えたのか、その歴史と変遷の"ヒストリア"を見ていきます。
斎藤さん、展覧会「ヒストリア〜神話と物語の世界〜」の企画のきっかけは?
西洋近代絵画では、羽を付けた天使や生首を持った女性など、不思議な登場人物やシチュエーションを目にすることがあります。実は神話や物語と関係していることが多いんです。私は神話が大好きなので「これはあの一節だな」と分かり、作品にのめり込むことができます。そんな自身の体験もあって、作品と一緒に、そのもとにある物語も紹介し、作品を広く深く楽しむきっかけになればと「ヒストリア〜神話と物語の世界〜」を企画しました。
斎藤さん、特にご覧いただきたい作品はありますか?
やはりこちらの漫画でも紹介したダリの《アルゴス(孔雀)》です。ルーベンスはじめ、多くの芸術家が同じテーマで作品を描いていますが、色彩や画面構成など、その多くは美しさが全面的に表現されています。一方でダリの作品では、よくよく見ると血が吹き出していたり、目玉が落ちていたりもする・・・目を縫い付けるその瞬間の生々しさが表現されていて衝撃を受けました。
斎藤さん、ダリ以外の作品についても教えてください!
ピカソの《戦士》も展示します。ピカソが1962年から制作した「サビニの女たちの略奪」を主題とした作品の習作の一つとされています。制作のきっかけは、ピカソが81歳の時に勃発したキューバ危機。戦争の悲惨さと残虐性、そして脅威を訴えるため、ローマ建国における伝説をもとに制作されました。ピカソは人物を単純化させることで残酷さや悲惨さを演出したと言われています。芸術家によって解釈や表現方法が異なる点も面白いですよね。