アーティストとコレクター、美術館の”密”とは?繋がりが生んだ、かけがえのない作品。
イギリスの現代芸術家PJ クルック(1945年〜)の作品は、サルバドール・ダリに次ぐ諸橋近代美術館のメインコレクションです。当館とPJ クルックとの出会いのきっかけは、他でもなく創設者でありコレクターの諸橋廷蔵(1932〜2003年)でした。
1995年、諸橋廷蔵はたまたまパリのポンピドゥーセンターのそばにあるアラン・ブロンデル・ギャラリーで開催されていたクルックの個展を訪れました。たちまちにクルックの作品に魅了され、滞在中に何度となくギャラリーを訪れます。そして、最終的にそこにあった作品すべてを購入したのです。
▶︎ PJ クルック《チェリー アンド ホワイト》1994年 諸橋近代美術館蔵
@PJ Crook 2021
諸橋近代美術館が開館してから3年後の2001年、国内で初となるクルックの回顧展を開く機会に恵まれます。この年、クルックの初の来日が実現します。当美術館での講演を終え、日本観光を楽しんだクルックは、作品の中で日本を題材にした作品を描くようになります。
実はこれがクルックと諸橋廷蔵の最後の対面となりました。
▶︎ PJ クルック《ジャポニカ》2001年、2003年加筆 諸橋近代美術館蔵
@PJ Crook 2021
PJ クルックの作品約30点コレクションする当館において、《ジャポニカ》はひときわ個性を放つ作品です。
本作品は2001年に制作されたものですが、2003年に諸橋廷蔵が急逝したことをうけ、次のような一文が加筆され、当館に寄贈されました(上記黄色部分)。
そこにはこう記されています。
諸橋廷蔵氏の人生と業績を称え、彼への追悼として(この作品を)贈る。- PJ Crook
本作品は〜2021年11月7日(日)まで下記展覧会に展示しています。